葡萄唐草文

好きなゲーム、アニメ、漫画について語ってます。

『リレキショ』について

 

f:id:pastel0313:20200827002605j:plain

別の表紙もあるみたいですね…


 『BanG Dream!』を読んだのが去年の5月。私が慣れ親しんでるPoppin’Partyの物語には原点があると知り、友人がもえしの写真集だのRASのタオルだのをゲーマーズで購入している中、一冊の本をレジへと持って行ったのです。熱意と意欲において他者とは違うことを証明したいなんて下卑た動機で手にした小説はポピパの教科書だったのだ。読み終わったその瞬間からポピパがもっと好きになったし、中村ワールドの住民票が欲しくなったものです。

 …なんか小説版バンドリの記事になりつつある。まあとにかく「BanG Dream!」を読み、私は中村航先生の作品をもっと読みたいとなり、次に手にした作品が『リレキショ』だったわけです。高校在学中に『絶対、最強の恋のうた』を読んでた時期があったけど浪人経験のある主人公を当時受験生だった自分が受け入れられるはずもなく、途中で読むのをやめてしまった。

 

 よって、この記事は『リレキショ』を読んだ感想や思ったことを、小説版バンドリの話もちょくちょく織り交ぜながら語ろうかなあという内容です。ネタバレ上等Bring it onな人は続きをどうぞ…。

 

 

 結局、半沢良って?

 物語を読み終わっても、主人公の素性や過去は何も明らかになりません。橙子に拾われたから「半沢良」になったわけで、拾われる前の名前も明確にならないし、拾われるようになった経緯も一切明かされません。

 こういった主人公って読者からしたらキモチワルイもので、私も半沢良のことが明らかになるか、と期待しながらページをめくらされたものです。上手い具合に主人公が物語の案内人となっています。

 それに、何も分からずじまいで良いんです。『リレキショ』はそんな些細な事に重きを置いている作品ではありません。面接で家族構成についてとやかく聞いてくる面接官がいないように、読者も半沢良のリレキショの全体像を見るべきなんです。謎が明らかになる快感を味わいたいなら東野圭吾ガリレオシリーズをお勧めします。

 

 二人の異質なコミュニケーション

 ウルシバラからの手紙によって繋がりを持つようになる良。繋がりといっても直接顔を合わせるわけではなく、決まった時間に決まった方角に向かって体操をして心の中では勉強頑張れーと呟き、ウルシバラはそれを見て満足する…というもの。

 さて、このお互い顔を合わせないコミュニケーション、『BanG Dream!』のカスミとサアヤを思い出したのは私だけでしょうか?何気なく書いた机のメッセージをサアヤによって拾われ(サアヤは拾い魔だった…?)始まったやり取り。自分のことを話すあまりカスミはサアヤのことを何も知らないでいたのと同じで、ウルシバラも良のことを何も知らなかったですね。そしてウルシバラもカスミも、もっと相手を知りたくて行動を起こすのも同じです。

 

 橙子と山崎

 無個性な良に対してこの二人はまあキャラが濃かったですね。サバサバ系と言うのでしょうか、葛城ミサトに似ていたり?

 ここから個人的な見解になりますが、橙子はノンケで山崎がレズなんじゃないかなあって。わざわざチャリで1時間かけて橙子ハウスまで遊びに来た山崎は橙子の青春を男との情事で妄想して橙子をからかい、後半は良に対して橙子との関係を聞いてきたりもします。山崎に未練は感じられず、叶わぬものとして諦めている様子を私は感じました。

 「レズならどうして良とキスしたのよ」?

 私が知りたいです。ですが「親友の弟とキスする」なんて夢を持つ人間なんて存在しません。これは山崎の嘘です。

 男とキスをすることで橙子への僅かな未練も断ち捨てるつもりだったのかもしれません…あくまで想像です。

 

 星川?

 突然半沢良はガソリンスタンドで加藤さんに向かって「実は俺、星川っていうんですよ」と暴露します。一人称が僕から俺に変わっていることから、半沢良になる前の主人公の人格、星川が喋ったということになります。ファストフード店で若い男が「ホッシー」に向かって一方的に話しかけているシーンがありました。良が客観的に捉えているのもあって多くの人が良、ホッシー、男のイメージをしたと思います。実際は良=ホッシー、男だったんですからまあびっくり。

 

 

 感想 何も考えずに読める作品

 褒めてます。

 小説には作者が伝えたいメッセージというのが隠されており、読者はそれを読み取る必要がありますが、『リレキショ』のメッセージは冒頭や裏表紙のあらすじにも書かれている「大切なのは意志と勇気。それだけで大抵のことは上手くいく」のみだと思っています。良にとってこの言葉は新たな世界を開くきっかけにもなり、その後も良を力強く牽引していくのです。そして、作品唯一のメッセージを受け取った後読者は「半沢良」の新しい世界の物語を何も考えずに只感じ取るのです。考えるな、感じろ。は『リレキショ』のために生まれた言葉なんじゃないかな。

 どんな現実味のないストーリーも「そこにある」んだから受け入れるしかないじゃん。なんて気持ちにさせられる本書を読み終わった直後は、なんともいえないフワフワしたような気分でした。でも決して悪くない。『リレキショ』は間違いなく名作です。