葡萄唐草文

好きなゲーム、アニメ、漫画について語ってます。

鬱漫画と思ってた『ミスミソウ』が鬱漫画だった。

 

 温泉に入った後のマンガコーナーにて。当初は『うしおととら』を読むつもりが、『ミスミソウ』が視界に入り即座にこちらを選択。鬱作品の話題で毎回その名が挙がり、鬱漫画界の征夷大将軍と呼ばれる(私が呼んでるだけ)この漫画は、まさに湯上りにはうってつけと言えるでしょう!

 

 予想してた通り、最悪が最悪を生み続ける悪夢のような漫画でした。サウナでデトックスした後だっていうのに、これ以上ないほど毒物を吸収してしまったよ。

 

 ただ、殺し合いは好きなジャンルなので、決して報われない展開に辟易としながらも中々に楽しめたと思います。今回はこの絶望の漫画『ミスミソウ』の感想をネタバレ込みで語っていきますぅ。

 

 

 

 

 

 

 

いじめの復讐劇LV100

 いじめられていた生徒が、加害者グループに反撃していく──というストーリーは最早ネット広告でワンパターン化していますね。

 

 が、この漫画はそんな代物とは次元が違います。家族が皆殺しにされます。主人公の野咲春花は加害者生徒に復讐として殺戮を始めます。この漫画を読むということは、ひたすら中学生同士が殺し合う様を見続けるということです。

 

 面白いのは、野咲春花の家族が殺されたのは単にいじめが発展した結果、という訳ではないという点ですね。他にも、ただのいじめ復讐とは違う要素に着目していきたいと思います。

 

 

あの町はミサイルで滅菌処理した方がいい

まともな奴と狂人、どっちが多いと思う?

 みんな頭おかしい。生徒らだけじゃなくて、その家族もほぼ全部。というか家庭環境のせいでおかしくなってる子もいるので、生徒だけが悪いわけではないというのがまたんとも。

 

 いじめグループの奴ら全員が真性の狂人だったら、読者はもっと胸がスッとしていたことでしょう。どんなクズに見える奴らの中にも、今際の際には家族を想い涙を流す子がいるもんだからスカッとはしない。

 

 一つ言えることは、あの中学校はもちろんだし生徒の家族が住まう一帯は滅んだ方が良いということです(笑) ラクーンシティよろしく核ミサイルでも撃ち込んでしまえ!

 

特にやばいと思った奴ら

南 京子

 主人公らのクラスの担任。いじめは当然見て見ぬふりだし、野咲春花の家族が焼き殺されようが、生徒が次々と復讐に遭おうが知ったこっちゃねぇという究極の事なかれ主義者。

 

 そんなクズがなんで教師やってるのかというと、いじめ抜かれた中学時代の過去を塗り替えかったから。だから彼女の目的は生徒と同じ「卒業」であり、生徒に対しても指導対象ではなく共に卒業する仲間である友達と見立てていた。

 

 教師の本分のかけらもなく、自分も被害者だったのに同じいじめに遭う野咲春花に対して微塵もシンパシーを感じないなど、過去を考慮しても一切の同情が出来ない人間です。こいつの末路は除雪車による全身ミンチです。ヘビーレインに出れる素質ある。

 

真宮 裕明

 間違いなく作中で最もイカレた奴、というか死んでザマミロと思えた奴かな。家庭環境に問題がある描写がないのに、小動物を快楽目的で殺しまくる残忍な人間です。カラスの死骸を机に詰め込むのは頭おかしいとしか言いようがない。タコにナイフ突き立てただけのカルマくんが可愛く見えます。

池川 努

 野咲春花に好意を抱くも、相場晄と仲良く話す彼女を見て、手に入らないなら自らの手で壊してやるーという思考に至る。でも現実にこういう奴いそうだよなぁ…。

 

 

相場晄という男

 クラスで唯一野咲春花の味方をするイケメンな男の子。彼の存在は苛烈ないじめに遭う野咲春花の大きな支えになっていて、狂人だらけの世界で読者の癒しにもなっていました。作中では異端すぎるほど善人である彼がどんな結末を迎えるか、誰もが気になっていたことでしょう。

 

 結論、こいつも狂人でした。けど事情はあるタイプです。父親はDV男で母親は依存気質という磁石のS極とM極…違ったS極とN極の如く引き合うのが当然と言わんばかりの組み合わせでした。我慢できなくなった晄は父親をカッターで切りつけます。そして父親は別の女の元へ行きました。

 

 母を救ったつもりだったのに、そんな母からは仲を引き裂いた奴だと罵られ、激昂した晄は母親を殴りつけます。狂暴化した晄に母親は許しを請き始めました。

 

 ここまでなら普通なのに、暴力をふるったことで晄は元両親の間で成り立っていた関係を理解してしまい、元父親と同じく母親に愛情と評して暴行を加えるようになってしまいます。蛙の子は蛙とはよく言ったものであり、晄の本性は過度な暴力性と異常なまでの偏執性だったのです。

 

 野咲春花とキスまで交わし、関係の進展が止まりませんが、ヒートアップした晄は春花と同棲の未来まで考え始めます。一方の春花は、祖父と妹と三人で暮らすつもりなので食い違いが発生。それに晄はキレてしまい、手始めに自分に反対した祖母をボコし、「春花は祖父のせいで同棲が出来ない」と勝手に思い込み春花祖父を病院送りにしてしまいます。もう野咲家は厄除け大師を訪れた方がいい。

 

 ドアホ、だと思いました。少しでも自制が効けば将来的に春花とゴールインできたはずなのに、次々とボロを出していくのがもったいない。アンガーマネジメントを少しでも学んでいれば良かったのにね…。

 

 

佐山流美という女

 春花が転校する前の旧いじめられっ子。醜女で挙動がキモい。春花が不登校を決めてから再びターゲットになる。

 

 小黒妙子に憧れており、彼女への執着を見せるが妙子からは寧ろ非常に疎まれている。再びいじめられるようになった原因の春花を憎むようになり、妙子から好かれるためにという理由で野咲家への放火を思いつくやべー奴。

 

 妙子が嫌う春花の家族を殺したんだから褒められるはず…と思いきや後述しますがそんな訳はなく、依然して気味悪がられます。微塵も可哀想ではないけどね。

 

 春花の復讐への恐怖に気が触れ、やられる前にやることに決め、その勢いで今までの仕打ちの復讐で妙子に襲いかかり、死闘の末に辛勝します。

 

 こういう人間を見てると「いじめられる側にも問題がある」というのも間違いじゃないんかなぁとすら思いますな。全編通して自分勝手、一度も自分に非があるかを疑わないゴミカス。こいつについて考えることすら不愉快なんでこの辺で締めます。

 

 

小黒妙子という女

 いじめグループのボスにしてクラスのトップ。誰もが彼女こそ元凶で最終的に春花は妙子と衝突するものだと思っていたことでしょう。が、彼女の一面が見えてくるにつれて初期に抱いたイメージは跡形もなくなったことでしょう。

 

 妙子は春花に好意を寄せていました。人と慣れ合わず、群がる生徒も鬱陶しく感じていた妙子が心を開く友達こそ春花だったのです。転校した春花に初めて話しかけたのは妙子で、東京に出て美容師になる夢を唯一打ち明けたのも春花に対してでした。

 

 そんな彼女がなぜ春花を”標的”にしたのか。それは晄と親しくなっていく春花が許せなかったからです。自分だけを見てほしかったというのと、前述した晄の本性に気づいていた妙子は、あんな男に傾いていく春花が我慢出来なかったのです。

 

 ここが終盤でハッとさせられるポイントでしてねー! 散々妙子が晄を嫌っていたのは単に春花と仲良しだからという訳ではなかったんですよ。

 

 

 これは完全版上巻のワンシーン。「ああ、妙子は春花には自分だけを見てほしいんだなあ」という読者の考えは当たってはいるのですが、なんともう一つ伏線が仕掛けられてたのですねぇ。

 

 このように、小黒妙子は本来常識的な人間であり、作中で唯一晄の正体を見抜いていたというのも、読了後の読者からの評価を上げている一因でしょう。とにかく意外性の塊である小黒妙子は『ミスミソウ』を単なるネット広告系漫画とは一線を画す作品に仕立て上げているキャラクターだと思います。

 

 でも、佐山流美が言うように「特別な感情を抱いているのに標的にするのはおかしい」のは事実です。様々な要因が重なったとはいえ彼女が放火の元凶という見方も可能なので、当然ながら妙子は「加害者」です。

 

 自身も元凶という自覚はあり、春花に対して言葉に詰まりながら謝罪をした末に和解を果たします。例に漏れず彼女も死んじゃうわけですが、作中では最も報われた人物だと言えるでしょう。

 

 

「誰が悪い」なんてない

 あの根暗女は度々「おまえのせい」という発言をしていましたが、誰か一人の責任でこの惨劇が起きたわけないよね。

 

 小黒妙子がいじめを始めなければ済んだ話かもしれない。

 相場晄がまともなら春花との関係に妙子は何も感じなかったかもしれない。

 佐山流美がイカレてなければ放火は起きなかった。

 クラスメートがいじめに加担しなければ事態は小規模で収まったかもしれない。

 南京子が「教師」なら全員で卒業式を迎えられたかもしれない。

 

 言うなれば「全員のせい」です。連帯責任ではなく、全員漏れなく加害者ってこと。

 

 

感想

 今まで書いてきたことの繰り返しになる部分もありますが…。

 

 中盤まで二番煎じいじめ系漫画に過ぎなかった『ミスミソウ』がどこで化けるのかが気になっていましたが、小黒妙子がその役を担ったと言えるんじゃないでしょうか。グループのトップがああいう立ち位置になるとは本当に予想外でしたね。

 

 みんないなくなる、というオチは破滅的なストーリーにふさわしいラストだと思いました。誰かが無駄に生き残るよりは遥かにスッキリするんじゃないでしょーか?

 

 一番不満なのは、晄が燃える春花パパを写真に収めたことぐらいかなぁ。本性として取り上げられてた「暴力性」と「偏執性」のどれにも当てはまらない奇行。押切よ、あんた晄をサイコパスとして描いてきたんじゃないでしょ?

 

 点数をつけるなら80点。低俗殺戮パーリナイ系で括るのはあまりにも惜しいし勿体ない作品だと思いました。

 

 

 読み返して気づいたこと。春花に見向きもされなかった池川が作ったボウガンが、最終的に春花の手に渡り晄をカメラごと貫いたという…。

 

 

 

違う